
💡 この記事の要点 (Key Takeaways)
社内不正は「機会・動機・正当化」の3要素が揃った時に発生します。犯人は「悪い人」ではなく、「魔が差した普通の人」です。元刑事が教える、権限分散と相互牽制(ダブルチェック)による「機会」の排除と、社員を守るための予防法務的組織づくりを解説します。
私が取調室で向き合った横領犯の多くは、特別な『悪人』ではありません。
勤続10年のベテラン経理担当者、誰からも好かれる営業マン、社長の右腕とまで言われた役員…。彼らは皆、どこにでもいる普通の人間でした。しかし、「機会」「動機」「正当化」という3つのピースが揃ったとき、彼らは一線を越えたのです。事件は起きてからでは遅い。私が現場で見てきた「犯行の予兆」と共に、そのメカニズムと対策を解説します。
【機会】の鉄則
犯行の芽は「聖域」と「小さな違和感」に潜む
「あの人に任せておけば大丈夫」。その絶対的な信頼が、皮肉にも不正の温床となります。経理、在庫管理、システム…。特定の担当者しか触れない「聖域」が生まれていませんか?私が捜査した事件では、不自然な休日出勤、自分の業務範囲を他人に教えたがらない、PC画面を隠すといった「小さな違和感」が、犯行のサインでした。
刑事の視点:仕組みで「機会」を奪う
【動機】の鉄則
「生活の変化」がプレッシャーのサイン
犯人の動機は、帳簿には書かれていません。それは、彼らの生活の中に現れます。急に羽振りが良くなる、逆に金の無心をするようになる、離婚や家族の病気で大きな支出を抱える…。こうした「生活の急変」が、普段は真面目な従業員を追い詰め、「会社のお金なら何とかなる」という思考に走らせるのです。
刑事の視点:「動機」の芽を摘む
【正当化】の鉄則
犯人は皆、自分を「被害者」だと思っている
「これだけ会社に尽くしたのに、給料が安すぎる」「社長の経営ミスをカバーするためだった」「借りただけで、返すつもりだった」。取調室で彼らが語るのは、反省の弁ではなく、自分がいかに不当な扱いを受けてきたかという「被害者意識」です。この自己正当化こそが、罪悪感を麻痺させ、犯行をエスカレートさせるのです。
