
💡 この記事の要点 (Key Takeaways)
2024年入管法改正で永住許可の取消事由が拡大。税金・社会保険の未納が取消しの直接原因になります。企業は従業員の「特別徴収」「社会保険加入」を徹底し、リスクを回避する必要があります。
「永住権を取れば安心」という常識の崩壊
今回の改正で最も注目されているのが、「永住者の在留資格取消し事由の拡大」です。
これまでは更新がないため安心と言われてきましたが、今後は税金や社会保険料の未納が、永住権を失う直接的な原因になり得ます。
なぜ今この改正が行われたのか、具体的に何がリスクになるのか、企業はどう対策すべきかを解説します。
🌏 なぜ今、ルールが厳しくなるのか?
背景にあるのは、同時に成立した新制度「育成就労」の創設です。
従来の「技能実習制度」が廃止され、人材確保と育成を目的とした「育成就労」がスタートします。これは基本的に3年間で「特定技能1号」の水準まで育て、将来的には「特定技能2号」を経て、永住許可へとつながるキャリアパスを明確にしたものです。
💡 改正の意図
国は「入り口(永住への道)」を広げる代わりに、「出口(永住許可後の管理)」を厳格化するバランスを取りました。
「永住者として日本に住み続けるなら、日本人と同じように公的義務をしっかり果たしてください」というメッセージと言えます。
永住許可「取消し」の3つの新基準
※2027年までに施行予定
① 税金・社保の「故意」の未納
これが実務上、最も影響が大きい変更点です。 所得税、住民税、国民年金、国民健康保険などを、支払う能力があるのに「故意に」支払わない場合、取消しの対象となります。
※病気や失業など「やむを得ない事情」がある場合は対象外となる見込みですが、督促を無視し続けるなどの悪質なケースはアウトです。
② 1年以下の「拘禁刑」も対象
これまでは「1年を超える実刑」が基準でしたが、改正後は1年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)でも、特定の罪(窃盗、傷害など)であれば永住取消しの対象になり得ます。
⚠️ たとえ執行猶予がついたとしても、罪を犯して有罪判決を受けた事実が重く見られるようになります。
③ 入管法上の届出義務違反
- 在留カードの常時携帯義務
- 住居地の届出(引越しから14日以内)
- 在留カードの有効期間更新(7年に1回)
これらを怠った場合も、悪質な場合は取消しの対象となります。
【企業向け】外国人社員を守る
リスク回避Tips
永住者の社員が資格を失うことは、企業にとっても貴重な人材の喪失やコンプライアンス上のリスク(不法就労助長など)につながります。
人事担当者が今すぐできる対策をまとめました。
✅ Tips 1:住民税の特別徴収を徹底
未納トラブルの多くは、自分で納付する「普通徴収」のケースで発生します。日本人社員と同様、外国人社員も原則として特別徴収(給与天引き)に切り替えてください。これにより、「うっかり払い忘れ」による未納リスクを物理的に防ぐことができます。
✅ Tips 2:社会保険への適正加入
パート・アルバイトであっても、加入要件を満たす場合は必ず社会保険(厚生年金・健康保険)に加入させてください。
「手取りが減るから入りたくない」という本人からの要望があっても、「将来、永住権が取り消されるリスクがある」と説明し、加入を促すことが本人のためになります。
✅ Tips 3:カード有効期間のチェック
永住者には「在留期限」はありませんが、「在留カードの有効期間(7年)」があります。これを過ぎるとカード自体が失効し、不法滞在とみなされるリスクや、新しい取消事由に該当する恐れがあります。
企業側でも有効期限を管理し、更新のアラートを出す仕組みを作りましょう。
✅ Tips 4:退職時のフォロー
退職から再就職までの「空白期間」に、国民年金や国民健康保険への切り替えを忘れて未納になるケースが多発しています。
退職時には、「役所に行って年金と保険の切り替え手続きを必ず行うこと」をアナウンスしてください。
💡 行政書士からのアドバイス
今回の改正は、真面目に暮らしている永住者を追い出すためのものではありません。しかし、「知らなかった」「うっかりしていた」での滞納が、将来的に致命傷になるリスクが高まりました。
企業の人事担当者様におかれましては、「税金・社会保険の支払いはビザの維持に直結する」という事実を、社内研修などで外国人社員に周知徹底することをお勧めします。
